技能実習生に最低賃金は適用される?給与相場や雇用する側の注意点とは?
日本では「求人募集しても応募がない」「雇用してもすぐ辞める」など人材不足に困っている会社も少なくありません。
そのため、外国人研修・技能実習生を採用する企業が増えています。
働く外国人にとっても、日本の技術を習得しながら収入を得られることは、大きなメリットです。
しかし、事業者側で一度も技能実習生を採用したことがないと、給与は日本の最低賃金で計算するのか、労災保険なども適用するのかなど、いくつもの疑問が浮かぶでしょう。
そこで今回は、技能実習生にも最低賃金が適用されるのかなど、雇用する事業者側がが気をつけるべきポイントについて、詳しく解説します。
技能実習生も最低賃金が適用されるの?
日本の国籍を持たない技能実習生でも、雇用関係が認められると、日本の最低賃金法が適用されます。
「外国人だから、日本人の給与より低く支給する」ということはできません。
日本はアジア諸国内で給与が高いため、技能実習生として来日する外国人が多くいます。
日本にとっては人手不足の解消ができ、外国人は自国では稼ぐことが難しい額の収入を得られるため、互いにメリットがあります。
最低賃金は2つの高い方で計算
技能実習生の最低賃金は、次の2種類の金額で大きい額をベースに給与計算します。
・地域別の最低賃金
・特定/産業別の最低賃金
例えば、製鉄や銅材製造などの仕事で、次のような最低賃金が設定されている場合はどうでしょうか。
種類 |
最低賃金 |
地域別の最低賃金 |
927円/時給 |
特定/産業別の最低賃金 |
976円/時給 |
地域別に比べて、特定/産業別の最低賃金額が49円高いので、高い方の時給(976円)で給与計算します。
さまざまな条件をクリアして技能実習生を受け入れたとしても、最低賃金を守らず給与支給していると、受け入れ停止の通達が来ます。
最低賃金は改定されるため、技能実習生を雇用する時は日々金額を把握しておきましょう。
技能実習生は割増賃金も発生する
技能実習生は日本人と同じく最低賃金の適用となります。
そして、割増賃金も同様に計算しなくてはいけません。
一例として、割増賃金が必要な状況と割増賃金率を記載します。
状況 |
割増賃金率 |
時間労働外/法定労働時間を超えた |
25%以上 |
休日や法定休日の労働 |
35%以上 |
午後10時~午前5時の労働 |
25%以上 |
休日の深夜に労働 |
60%以上 |
職種によっては、深夜労働や法定休日でも働かなくてはいけないこともあるでしょう。
技能実習生も、日本人と同じく労働基準法が適用されるので、割増賃金は必要です。
技能実習生の給与相場はどれくらい?
厚生労働省が報告した「2019年の賃金構造基本統計調査」によると、技能実習生の給与相場は次の通りです。
【月給】156,900円
【時給】977円
月給と時給の金額は、技能実習生の25歳~29歳の賃金水準で、月給は残業代や賞与を除いています。
実際は、年齢や働く地域、職種によって、技能実習生でも水準より多く給与を受けている人もいます。
技能実習生も最低賃金で支給!雇用側の注意点はある?
技能実習生を受け入れる時は、最低賃金に気をつけて給与計算しなくてはいけません。
雇用する事業者側は最低賃金だけではなく、他にもいくつか注意点があります。
技能実習生は労災や各種保険も適用
技能実習生は最低賃金法や労働基準法だけではなく、労働安全衛生法や雇用保険などの法律が適用されます。
そのため、最低賃金だけではなく、国民健康保険や健康保険、厚生年金、労災などの手続きも必要です。
国民健康保険に関しては、1年以上、日本で滞在就労する場合に限ります。
最低賃金だけでなく36協定も適用
技能実習生が法定労働時間を超えて働く場合、労働基準法である36協定の締結をして、労働基準監督署に届け出なくてはいけません。
36協定で定める時間外労働の限度時間は、一般労働者で1週間15時間、1ヶ月45時間などです。
1年単位の変形労働時間を取り入れている場合、限度時間が変わるため、36協定の範囲をしっかり確認しておく必要があります。
技能実習生を最低賃金で雇用しないと厳しい罰則へ
技能実習生は日本の制度や法律を知らない人も多く、職場のトラブルや悩みをどこへ相談するのか、わからないケースが多いです。
しかし、この状況に甘んじて事業者側が最低賃金より低い給与を支給していた場合、最低賃金法違反によって「50万円以下の罰金」を受けなくてはいけません。
また、特定最低賃金以上の給与を支給しない場合、労働基準法違反によって「30万円以下の罰金」が科せられます。
たとえ技能実習生が承諾をしていても、罰則は消えることがないので気をつけましょう。
技能実習生の最低賃金で負担増加!助成金制度を活用しよう
人手不足が続く中、最低賃金も年々上昇。
事業者側にとって、経営維持の悩みは大きな問題です。
技能実習生を受け入れる事業者側の、最低賃金の増加負担を少しでも軽減するために、国は業務改善助成金の制度を用意しています。
助成内容は、人材育成や教育訓練などをおこない、事業場内の最低賃金を一定金額以上引き上げた場合、生産性を高めた取り組みにかかった金額の一部を助成するというもの。
助成額は上限や条件がありますが、ぜひ活用したいですね。
まとめ|技能実習生の最低賃金を守って雇用しよう
技能実習生の最低賃金は、日本人と同じです。
最低賃金法や労働基準法が適用されるので、しっかり守りましょう。
給与計算は、地域別と特定/産業別の最低賃金で高い方が適用されるため、事業主側は仕組みをよく理解しておかなくてはいけません。
最低賃金を適用しなかった場合、厳しい罰則があるので、詳しい内容や困りごとは専門家へ相談しましょう。
特定技能登録支援機関ジーオ【登録支援機関番号 20登-005269】